変動ローンのリスク、今こそ正確な理解が必要です!

「今度、金利が上がるのですが、すぐに借り換えた方がいいでしょうか?」

先日、お客さまから住宅ローンに関する相談を受けました。

 

このお客さまは、日々の支出管理をキッチリ行い、積み立てによる資産運用にも計画的に取り組むなど、とてもしっかりされ、マネーにお強い、という印象を受けました。

その後、住宅ローンの話題になって、こんなやりとりをしました。

 

お客さま)これから金利が上がって、ローンの返済額が増えるみたいで・・・

私)金融機関から、返済額が増える連絡がございましたか?

お客さま)特にないですけど、金利が上がるのだから、増えると思うのですが・・・

私)一般的な住宅ローンなら、すぐには増えません。

お客さま)え?増えないのですか?!!

私)ローン契約書で、返済額の見直しルールを確認してみましょう。

 

よく考えてみると、住宅ローンの金利上昇は、数十年ぶりのこと。ですから、変動ローンのしくみは、あまりよく知られていないのかもしれません。むしろ、「金利が上がりはじめた今こそ、FPや金融機関が、もっと情報発信しないといけない」と思い、冒頭のタイトルで、いまこのブログを書いているというわけです。

 

日本では、超低金利時代が長く続き、住宅ローン金利も低金利で推移してきました。特に、金融機関が主力商品と位置付けた変動金利型住宅ローン(変動ローン)は、激しい金利競争の結果、新規利用者向けの適用金利(新規貸出金利)は0.5%を切る低水準となりました。

しかし、多くの金融機関が10月に変動ローンの基準金利を引上げ、新規貸出金利を引上げる金融機関が徐々に出てきたほか、既に住宅ローンを返済中の利用者(既存利用者)向けの適用金利は、ほぼ一律で引上げられることになりました。

冒頭のお客さまは既存利用者で、まさにこのタイミングで相談に来られたわけですが、「すぐに返済額は増えません」という話にビックリしていました。

 

一般的に、変動ローンを提供している金融機関の多くは、貸出条件に「5年・125%ルール」を設けています。これは、金利がどれだけ上昇しても、

・毎月返済額は、5年間変わらない

5年後に毎月返済額が増加する場合でも、それまでの返済額から125%以上増加しない

というもので、金融機関は住宅ローンの借り手に金利上昇リスクを転嫁しつつも、「激変緩和措置」として上限を設けたのです。

 

したがって、毎月返済額が10万円の場合、返済額が最も増えたとしても、

・6年目以後:¥125,000.-(=¥100,000.-×125%)

11年目以後:¥156,250.- (=¥125,000.-×125%)

これ以上にはなりません。何より、少なくとも今後5年間は、家計への影響はありません。

 

冒頭のお客さまに、「ローン契約書で、返済額の見直しルールを確認してください」と申し上げたのは、「まずは5年・125%ルールの有無を確認してください」という趣旨でした。

利用している変動ローンにこのルールがあるなら、返済額はしばらく増えませんし、対策もじっくり検討することができるからです。

 

もっとも、5年・125%ルールがあるからといって、ホッとしてはいけません。むしろ、困るのはこの後だからです。なぜなら、「どれほど金利が上がっても、返済額の上限が決まっている」というしくみの裏には、「増やしきれない返済分は後ろに先送りされ、最後的には、最終返済日に一括での返済しなければならない」というしくみがあるからです。

 

したがって、変動ローンのリスクは「金利が上がると、返済できなくなるリスク」というより、「最後に返済しきれなくなるリスク」が、正確なところではないかと思います。

それから、上記の例では、6年目に毎月返済額が¥25,000.-増えることになりますが、これも避けたいところです。それでは、6年目に返済額を増やさず、返済も後ろに先送りしないためには何ができるのでしょうか、それは次回に説明したいと思います。

 

 

住宅ローンに関するアドバイスは

あざみ野、たまプラーザの独立系ファイナンシャルプランナー

ライフ&マネーソムリエ Office-Tak

代表 尾﨑琢磨

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