大手銀行5行*は、変動金利型住宅ローン(「変動ローン」)の基準金利を、4月から0.25%引上げました。
これは、日銀が1月に実施した利上げを受け、各行が変動ローンの金利のベースとしている短期プライムレート(「短プラ」)を、3月に0.25%引上げたことによるもので、他の金融機関の多くも、同様の対応としています。
金融機関は、それぞれが定めているルールに基づき、個々のお客様の住宅ローンに適用している金利(「適用金利」)を引上げます。
そのタイミングを踏まえ、今回は、住宅ローンを返済中の「既存利用者」に、今すぐ行っていただきたいことをご紹介します。
金利引上げに関する報道をみると、上記の事実は簡単に触れるだけで、記事のほとんどは「毎月返済額はいくら増えるか」に関して、という印象です。
既存利用者の関心も、当然そこに集中し、「ローン金利が上がり、毎月返済額が増えるので、今後どうすればよいか」と、あわてて相談に訪れるお客さまも少なくありません。でも、それを考える前に、必ず行っていただきたいことが一つだけあります。
それは、いま利用している住宅ローンの「適用金利や毎月返済額の見直しルールを、ご自身の契約書で確認する」ことです。なぜなら、今回の件に関しては、適用金利も毎月返済額も、見直し前である可能性が高いからです。それはどういうことなのでしょう。
一般的に、変動ローンの毎月返済額は、次のステップを経て増加します。
①:金融機関が、経済状況を踏まえて「短プラ」を引上げる。
②:①に伴い、住宅ローンという商品としての「基準金利」が引上げられる。
③:②に伴い、個々の住宅ローン契約の「適用金利」が引上げられる。
④:毎月返済額が増える。
①の短プラは、もともと企業向け融資の指標金利として、金融機関がいつでも戦略的に見直す性格の金利です。一方、②の基準金利と③の適用金利は、短プラの上げ下げに連動するルールが、金融機関毎に決められています。
ある金融機関はホームページで「(住宅ローン)お借入後のお借入利率は、毎年4月1日、10月1日の当社の短期プライムレートを基準として年2回利率の見直しを行い6月、12月の約定返済日からそれぞれ新利率となります。」と公表しています。
今回のケースでは、3月1日に短プラが引上げられ(①)、以後は前述のルールにより、4月1日に基準金利も見直されましたが(同②)、適用金利の見直し(③)は6月の返済日からなので、まだ「見直し前」であることが分かります。
では、肝心の毎月返済額は、6月から増えるのでしょうか。
ホームページを引き続き見ると、次の記載があります。
「変動金利コースの場合は、年2回利率を見直しますが、元利均等返済においては利率変更があった場合でも、毎回のご返済額(お利息込み)はお借入後5回目の10月1日を基準とする見直し時まで変更しません。この間は元金と利息の内訳のみを変更します。最初の返済額見直し以降は5年ごとに再計算して、新しいご返済額を定めます。ただし、変動金利コースの期間中においては、利率が上昇しても、新しい返済額は従来のご返済額の125%以内とします。」(下線は筆者が追加。)
つまり、変動ローンの中では最も一般的で、元金と利息の合計が毎月同じ元利均等返済の住宅ローンにおいては、
・毎月返済額は5年間変わらない(元金と利息の内訳のみ変更)。
・適用金利が上昇しても、5年後に見直す返済額は、見直し前の125%を超えない。
ということが分かります。ですから、毎月返済額の増加も、数か月以内に起こることはありません。
多くの金融機関は、この家計にやさしい「5年・125%ルール」を導入していますが、別の観点からの弊害もあり、最近設立されたネット銀行などでは導入していないところもあります。いま利用している住宅ローンにこのルールがあれば、金利上昇対策をじっくり検討できますし、なければ直ちに対策を講じる必要がある、とても大きな別れ道といえます。
ちょっと面倒かもしれませんが、今すぐローン契約書を確認してみましょう。
その上で取り組むべき検討の選択肢は、次回ご紹介します。
*:三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、りそな銀行、三井住友信託銀行
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