成年後見制度の活用方法を、具体的に考えてみましょう!

前回のブログで、

2040年には、高齢者の約3人に1人に認知症の兆しが現れる見込み

・高齢者の資産を本人に代わって管理する方法に、「成年後見制度」と「家族信託」がある

ということをお話ししました。

 

今回は、成年後見制度の活用方法を、具体的に考えてみましょう。

 

成年後見制度は、「法定後見制度」と「任意後見制度」に大きく分けられます。

法定後見制度は、家庭裁判所(家裁)に選任された後見人(成年後見人等)が、対象者本人を保護するもので、保護の度合い(本人の意思能力低下度合い)の大きい順に、「後見」「補助」「保佐」の3つに分けられます。

任意後見制度は、本人が元気なうちに自身の判断能力が衰えた場合に備え、公正証書の任意後見契約で、将来の任意後見人(任意後見受任者)と、委任する事務内容をあらかじめ定めておき、本人の判断能力が低下した後、任意後見人による後見が開始されるものです。

 

では、法定後見制度と任意後見制度は、どう使い分けるべきでしょう。

 

端的に言えば、「後見が必要」となった時点で、既に本人の判断能力が乏しい場合は法定後見制度を、そうでないなら任意後見制度を利用するのがベストではないかと思います。

しかしながら、成年後見制度の利用件数に占める任意後見制度の利用割合は、2023年末現在で1.1*と驚くべき低さです。制度の周知不足、手続きの煩雑さや費用負担のほか、本人と任意後見受任者の関係が将来損なわれる可能性を懸念した運用の難しさなど、さまざまな原因が挙げられています。ちなみに、成年後見の利用は71.7%に達します。

 

私は個人的な事情で、過去に成年後見人を受任したことがあります。成年後見人と成年被後見人の地位はそれぞれ法務局で登記され、成年後見人が成年被後見人の代わりに手続きを行う際は、登記事項証明書を提示したりします。実際に金融機関などで手続を行っていると、成年被後見人の権利が、もはや世の中に存在しないことが強く実感され、一抹の悲しさを覚えます。本人に判断能力があるままで法定後見制度を利用することは、本人の人格を否定するような印象を受けます。

本人が家族全員でと話し合って、任意後見制度を利用すること、委任事務の内容、任意後見受任者をだれにするかを決め、以後は家族全員で受任者に協力していくと約束することが大事ではないかと思います。

 

ところで、後見人にはどのような人を立てるべきでしょう。

 

2023年における成年後見人等と本人の関係*は次のとおりで、親族以外が約8割、その6割以上が司法書士と弁護士です。

〇親族・親族以外の別

-親族18.1%、親族以外81.9

〇親族の内訳

-子53.5%、兄弟姉妹15.4%、配偶者7.0%、親6.6%、その他17.4

〇親族以外の内訳(主なもの)

-司法書士35.9%、弁護士26.8%、社会福祉士18.4%、社会福祉協議会・行政書士4.6

 

後見を申立てた主な理由*は次のとおりで、金融資産の管理と身上保護が約半数です。

-預貯金等の管理・解約31.1%、身上保護24.3%、介護保険契約14.3%、不動産処分11.8%、相続手続8.5

 

法律専門家の司法書士と弁護士が全体の約半数を受任している一方、後見申立て理由の半数以上は、親族でも可能と思われる金融資産の管理や、親族が担うに相応しい身上保護であり、個人的には、受任者の専門性と実際の業務内容に強いミスマッチを覚えます。

複雑なケース以外の場合は、本人と良好な関係の親族が受任する、この考え方から適切な人選を行った上で家裁に申立てを行い、選任を仰ぐながれがいいのではないでしょうか。これは、費用の観点からも重要で、親族以外の「先生」に受任いただく場合は、相応の報酬を支払う必要が出てきますが、親族であればコストセーブにもつながります。

 

これに関し、「専門家以外には横領の可能性がある」との懸念もありますが、2023年における不正件数184件には専門職によるものも29件が含まれています*。関係の良好な親族が成年後見人等を受任し、定期的に他の親族からチェックを受けるのがベストではないかと思います。

 

 

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*:最高裁判所調べ