私は約10年前に、個人的な事情で、成年後見人を受任していたことがあります。先日、その成年被後見人が入居していた施設の近くを通りかかったところ、担当だったスタッフさんとバッタリ再会し、当時のことを思い出しました。
成年後見人といえば、昨年9月17日のブログで、最高裁判所が集計した日本における成年後見制度の活用状況に関する資料*を紹介し、
・成年後見人の約8割は親族以外が受任し、司法書士や社会福祉士などの資格保有者が務めるケースが多いこと
・後見申立ての目的として、預貯金の管理や身上保護など、身近な親族が日常対応できることが上位にあがっていること
を踏まえ、「親族以外の専門家に後見人になってもらい、わざわざ報酬を払って、親族でできることを担当してもらうのは、ミスマッチの印象が否めない」という意見を述べました。
実は最近、上記の最高裁資料を読み返したのですが、当該資料にあるもう一つのデータと上記の2点を合わせて読み解くと、また違った姿がみえてくることがわかりました。
もう一つのデータとは、申立人と本人の関係です。
成年後見制度(後見、補佐、補助、任意後見)において、令和5年における申立人と本人の関係上位は次のとおりです。
1位:市区町村長(9,607件、23.6%)
2位:本人(9,033件、22.2%)
3位:子(8,132件、20.0%)
4位:兄弟姉妹(4,491件、11.0%)
ちなみに、5年前の調査結果は次のとおりです。
1位:子(8,999件、24.9%)
2位:市区町村長(7,705件、21.3%)
3位:本人(5,715件、15.8%)
4位:兄弟姉妹(4,469件、12.4%)
お分かりのように、市区町村長(「首長」)を申立人とするケースが、5年前と比較して、件数、シェアとも増加し、子を逆転して1位になりました。
この現象について、冒頭の2つの事実とあわせ、意味するところを考えてみましょう。
そもそも成年後見制度において、申立ては、本人の「常況」に鑑み、本人自身、配偶者や子供の家族、あるいは4親等以内の親族が行うのが一般的、というイメージです。
では、実績が増加してトップになった首長による申立ては、どのようなケースで行われるのでしょう。それは、「身寄りがない」あるいは「家族に頼れない」高齢者自身の判断能力が不十分となってしまったケースです。具体的には、
・少子高齢化で、一人暮らしの高齢者が増加
→本人の預貯金管理能力などが不十分になり、身上保護が必要に
→やむを得ず、市区町村長が後見等を申立て
→後見人等は、家族や親族に依存できず、やむを得ず資格保有者が務める
というながれであり、地方自治体が積極的に高齢者対策を進めている状況が、にじみ出ているといえます。
もっとも、高齢者対策の進み具合という視点で、全国の家庭裁判所を対象に、申立件数に占める首長申立件数の割合を比較してみると、平均値の23.6%に対し、最高は熊本の44.0%、最低は京都の10.7%と、かなりばらつきがあります。
今後もこの対策を進めていくには、一人暮らし高齢者のフォロー体制強化、成年後見人等のなり手の確保など、人材や財源の確保と関係者の連携が必要不可欠な印象を受けます。
ファイナンシャルプランナーにおいても、それぞれの立場で貢献できることに取り組んでいくことが大切と考えます。
*成年後見関係事件の概況(令和5年1月~12月)
高齢者(親世代)のサポートに関する相談は
横浜市青葉区(あざみ野、たまプラーザ)の独立系ファイナンシャルプランナー
ライフ&マネーソムリエ Office-Tak
代表 尾﨑琢磨
まで、お気軽にお問い合わせください。