理解しておきたいペアローンのメリットとデメリット(2)

前回ブログの続きです。

 

マンション販売価格が高騰を続ける昨今、共働き夫婦に「ペアローン」を活用するケースが増えています。

ペアローンは、一つの購入物件について、夫婦それぞれが住宅ローンの契約者となり、別々に住宅ローンを組むというもので、1人の場合よりも借入可能額を増やせるため、購入物件の予算が増やせるほか、住宅ローン控除もそれぞれが適用を受けることができる、などのメリットがあります。

 

ここまでが前回のおさらいで、今回は、「ペアローンのデメリット」をみていきます。

以下に詳しく説明しますが、基本的な考え方として、「未来のさまざまなライフイベントの発生可能性を考慮して、将来の返済確実性をチェックし、それらを夫婦の共通認識とする」ことが必要不可欠です。

 

ペアローンの利用を検討している今この瞬間は、共働きを長く続けることが、夫婦の共通認識かもしれません。しかし、将来、子供が生まれたときに、育児や教育をもっとじっくり行いたい、と考えるかもしれません。これは至極当然の親心ですが、ペアローンを返済する立場としては、「産休・育休(の長期化)による収入の減少」や、「教育プラン変更(私立の手厚い教育を長く受けさせるなど)による家計収支の悪化」は、返済能力上はマイナス材料です。

また、夫婦自身にも「病気・ケガによる収入の減少」という可能性がありますし、親との関係で、突然の介護を余儀なくされる「介護休による収入の減少」という状況も、十分にあり得ます。

ペアローンを返済していくには、夫婦で働き続けなければなりません。そのために、家族や自分のケアがおろそかになるのは、本末転倒です。

 

ここまでは、あくまでも夫婦共同で頑張ることが前提ですが、ペアローン最大のデメリットは、次に述べる「離婚」時の対応がややこしいことです。

 

離婚届を提出すれば夫婦関係は終了しますが、ペアローンを利用している場合、一つの物件について2人それぞれが住宅ローンを返済しているという関係を、整理しないといけません。いくつか方法がありますが、それぞれにネックがあります。

 

一つ目は、物件を売却した資金でペアローンを全額返済する方法です。ネックは、売却価格がペアローンの借入残高よりも少ない場合に、自己資金などで不足を賄う必要が生じることです。「じっくり売却先を探せばいい」のでしょうが、離婚するかしないかの状況で、それはとても現実的ではありません。

 

二つ目は、夫婦の一方が離婚後も住み続ける方法です。この場合のネックは「夫婦がお互いの連帯保証人(連帯債務者の場合もあります)を務める」というペアローンの契約条件です。

まず、ペアローンの金融機関に、「離婚するからこの条件を外してほしい」と依頼しても、条件を逸脱した個別対応に応じる可能性はないでしょう(この契約条件だからこそ、多くの融資が受けられたわけです)し、代わりの連帯保証人候補者がみつかったとしても再審査となります。

次に、離婚の際に、夫婦の一方が自身のローンを完済して退去するケースです。自身のローンは完済しても、ひきつづき元配偶者の連帯保証人なのですから、居住を続ける元配偶者が、離婚後の家計収支悪化などでローンの返済を怠ると、保証債務の履行が求められる可能性があります。

また、ペアローンを一本化して片方が居住を続けるというケースもありますが、単独での返済能力について金融機関の審査があるほか、単独名義とするために片方の名義の持分を買い取る際、贈与税が課される懸念があります。

 

このように、ペアローンを利用して離婚に至ると、通常の財産分与に加え、ペアローン対策としての金銭的な協議が必要になることはもちろん、それが第二の人生に大きく影を落とすことを理解すべきでしょう。だからといって、「ペアローンを完済するまでは、絶対離婚できない」というのも、それはそれで、本末転倒な生き方に思えます。

 

ペアローンを利用する際には、夫婦でじっくり将来のライフプランを見据えた話し合いを行い、ファイナンシャルプランナーと返済計画を検証した上で、利用することをお勧めします。

 

 

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