老人ホーム独特の料金体系、「入居金方式」と「月払い方式」の一長一短

これまで、3回にわたって高齢者施設について紹介してきました。

前回ブログでは、費用が比較的安い「公的施設」に比べ、快適な生活環境が重視される「民間施設」への入居を検討する場合、施設を比較する項目の中で「入居一時金」の存在が特徴的であるという説明をしました。

今回は、この入居一時金について、詳しくみていきましょう。

 

そもそも入居一時金とは、一定期間の家賃をまとめて入居時に前払いするもので、金額のレベルは、施設によって数百万円から数千万円とさまざまです。この「入居金方式」のメリットとデメリットについて、通常の「月払い方式」と比較してみます。

 

(1)入居金方式

〇メリット

・月々の家賃を、安く抑えられる

・入居者が長生きした場合、総費用は月払い方式より少なくなる

〇デメリット

・入居時に、まとまった費用が必要

・入居者が短期間で退去(死亡)した場合、支払済の入居金の一部は返還されない

・「初期償却」の正確な理解が必要

 

(2)月払い方式

〇メリット

・入居時に、必要な費用が少ない

・退去も、簡単で気軽

〇デメリット

・入居者が長生きした場合、総費用は入居金方式より多くなる

 

まず、比較の前提として、毎月の家賃は将来まで一定とします。

はじめに、入居金方式のメリットですが、入居一時金を高額にすればするほど、月々の家賃は安く抑えられます。また、家賃が安く抑えられた水準のまま、将来も変わらないのであれば、入居者が長生きすればするほど、月払い方式に比べ、総費用の削減効果が高くなります。

 

一方、入居金方式のデメリットを紹介する前に、施設側の経理処理に関する理解が必要となるのですが、大きな特徴として、施設側は、入居一時金の一定割合を「初期償却」として、アップフロントで売上に計上します。

例えば、入居一時金1,500万円、初期償却率30%、5年均等償却という条件であれば、初期償却額は450万円です。そして、入居一時金から初期償却額を除いた1,050万円について、5年均等で210万円ずつ、売上に計上していきます。そして、この償却期間(5年)の間に、死亡などの理由で入居者に退去が発生すると、未償却部分だけが返還されます。

これについて、誤った理解で初期償却が認識できていないと、「返還額が少なすぎる」となってしまい、施設側とトラブルになるケースもあるようですから、契約前に重要事項説明を受ける際などには、正確に理解することが必要です。

以上から、入居金方式のデメリットは、入居時にまとまった資金が必要であること、償却についての正確な理解が必要であること、と考えます。

 

月払い方式のメリット、デメリットは前述のとおりで、入居金方式と裏腹の関係になります。

 

では、「入居金方式と月払い方式のどちらがいいか」ですが、これは、重視するポイント次第で人それぞれ、ということになるでしょう。ただ、「快適な生活環境」を求めて民間施設に入居するのは、基本的に「入居者が長生きすることを願って」のことですから、入居時に一定の資金負担が可能であれば、入居金方式とすることが経済合理性に叶い、入居者の気持ちに寄り添うことになるのではないでしょうか。

 

 

セカンドライフに関するアドバイスは

あざみ野、たまプラーザの独立系ファイナンシャルプランナー

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