三菱UFJ銀行などの大手銀行*は、10月から変動金利型住宅ローン(変動ローン)の基準金利を引上げました。テレビや新聞などでも取り上げられていますので、このブログでも、背景や影響について整理したいと思います。
そもそもこのきっかけは、「2%の物価安定目標」を掲げた日銀が、2024年7月に行った政策金利の追加引上げ(年0.1%→0.25%)です。預金金利が引上げられ「金利のある世界」が戻ってきた一方で、ローン金利にも影響が及んできたのです。
では最初に、大手銀行における変動ローンの金利見直しステップをみていきましょう。そもそもローンの金利は、商品提供元の金融機関が独自に決めるわけですから、バラバラでいいようなものの、競争原理の下で、ほぼ同じステップで推移してきました。
【ステップ①】「基準金利」を決める
大手銀行は、優良企業向け短期貸出の基準金利「短期プライムレート(短プラ)」に1%上乗せした金利を、変動ローンの基準金利としています。
日銀の政策金利追加引上げに伴い、大手銀行は実に17年ぶりに短プラを0.15%引上げ、1.475%から1.625%としました。この結果、変動ローンの基準金利も0.15%引上げられ、2.625%となりました。
【ステップ②】「適用金利」を決める
大手銀行は、①の基準金利をそのまま適用しているわけではありません。基準金利を一旦「変動ローン店頭表示金利」とした上で、これに借入人の信用力に応じて個別に金利を優遇したものを、適用金利としています。
次に、大手銀行における金利優遇の取扱いをみると、既に変動ローンを利用している方(既存利用者)への対応は、大手銀行すべて同じですが、これから新たに利用する方(新規利用者)への対応は、最も信用力の高い借入人に適用する「最優遇金利」の取扱いが、3パターンに分かれることとなりました。以下で、具体的に説明します。
〇既存利用者への対応
前述の、借入人の信用力に応じた金利優遇の「幅」は、大手銀行すべて、当初決めたものから変えることはありません。なので、適用金利も、すべての大手銀行において、基準金利の引上げ幅と同様に0.15%上昇することになります。
〇新規利用者への対応
【パターン①】金利の最優遇幅を0.15%拡大(金利は0.15%引下げ)し、基準金利の0.15%引上げを吸収。結果的に、最優遇となる適用金利はこれまでと変わらず。・・・三菱UFJ銀行
【パターン②】金利の最優遇幅を変えず、最優遇となる適用金利は、基準金利の引上げ幅と同じ0.15%引上げ。・・・三井住友銀行、りそな銀行、三井住友信託銀行
【パターン③】基準金利も金利優遇幅も変えず。最優遇となる適用金利はこれまでと同じ。・・・みずほ銀行
そもそも、最も信用力の高い借入人に適用される最優遇金利は、金融機関にとって「看板金利」という側面があります。したがって、金融機関としては、なるべく最優遇金利を低く抑えて商品優位性をアピールし、激化する住宅ローン獲得競争を有利なものにしたい、という思惑が根底にあります。
したがって、パターン①はこの点を最も重視した戦略、パターン②は金利以外の要素も併せて訴求していく戦略、パターン③は他社スタンスを見た上で戦略を打ち出していく戦略、ということで、いつもは同じような大手銀行の戦略が、3つに分かれたと考えられます。
また、大手銀行以外では、最近設立されたネット銀行などで、短プラを基準金利とせず、市場金利の「TIBOR」や「独自に定める金利」を基準金利としているところもありますので、状況を一度確認してみるとよいでしょう。
最後に、日銀は、年内に再利上げを行うといった観測もあり、変動ローン金利競争は今後さらに激化する可能性があるところ、今後とも状況を注視していく必要があります。
*:三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、三井住友信託銀行
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