生命保険業界で最大手の日本生命は、11月21日に、個人保険や個人年金保険の保険料率(予定利率)について、引上げを発表しました。
具体的には、2025年1月2日以降の新規契約分(既存契約は2025年5月2日以降更新分)から、一時払いを除く各種保険商品の予定利率を、次のとおり引上げるというものです。
〇年金保険:0.60%→1.00%
〇終身保険:0.25%→0.40%
〇学資保険:0.85%→1.00%
同社によれば、「今回の保険料率の改定は、現在の運用環境、市中金利動向等の状況を踏まえ」行うとし、引上げは、実に「約40年ぶり」とのことです。
予定利率の引上げには、どのような背景や効果があるのでしょうか。
そもそも、予定利率とは、保険会社が個人や企業などの契約者にあらかじめ約束する、「運用利回り」です。
保険会社は、「収支相等の原則」により、収入となる保険料の総額と支出となる保険金の総額が等しくなるように保険料を算定しますが、その際、契約者から受け取る保険料をどの程度の利回りで運用できるかを予測し、その運用益も加味した上で、保険料を算定します。
つまり、あくまでもイメージですが、保険金、保険料、予定利率には、以下のような関係が成り立っています。
保険料(契約者が、保険会社に支払い。)
+
運用益(保険会社が、保険料を予定利率に基づき運用。)
↓
保険金(契約者と保険会社が、あらかじめ契約で取り決め。原資は保険料や運用益。)
予定利率引上げが、3者のバランスに及ぼす影響をみると、
あらかじめ取り決められた保険金の額は変わらない
→予定利率引上げにより、保険会社が運用益を増やす
→運用益が増える分、契約者が支払う保険料は引下げられる
ということになります。
要は、保険会社が「お客さまからいただく保険料を運用する環境が改善したので、今までより少ない保険料のお支払いで足ります」と判断した結果、契約者の負担が軽くなるということです。
以下はあくまでも単純計算ですが、毎月一定額の積み立てを45年継続して1,000万円を作る場合、年利0.6%の場合は毎月¥16,135.-が必要ですが、年利が1.0%に上昇すると、必要毎月積立額¥14,671.-まで約9.1%減少します。
今回の予定利率引上げにおいても、同様の現象が起こります(保険会社では、契約者の性別・年齢や、事業費なども考慮して、精緻に保険料の計算を行います)。
ところで、私が社会人となって銀行勤務がスタートした1980年代後半は、「生保の年金利回りは5.5%」というのが常識でした。これが、バブル崩壊や日銀の金融緩和を経て長期にわたって金利が下がり続けたため、生保各社も、予定利率を1%割れの水準まで引下げ続け、契約者に保険料の負担増を求め続けてきました。
日本生命においては、2024年3月の日銀によるマイナス金利政策解除と7月の追加利上げを契機とする足下の金利上昇や今後の金利先高観を踏まえ、今回の予定利率引上げを決めたものと考えます。
銀行においては、既に預金や貸出に金利のある世界が戻ってきたことは、このブログでも何度かご紹介したとおりですが、そのながれが保険業界にも及んできた模様です。
これに関しては、既に住友生命が2023年10月に、富国生命が2024年4月に、それぞれ予定利率を引上げていますが、今回は最大手が動いたことで、業界全体で追随の動きが広がっていく可能性があります。
生命保険の加入を検討する際には、このあたりに注目してみるのも一考ではないでしょうか。
保険に関するアドバイスは
あざみ野、たまプラーザの独立系ファイナンシャルプランナー
ライフ&マネーソムリエ Office-Tak
代表 尾﨑琢磨
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